【新人戦2026 注目チーム特集】 登山競技 鳥栖工業高校 前田賢人・酒井遥希・小川隼大選手 part2

SSPフレッシュシリーズ(新人戦)の登山競技に挑む、鳥栖工業高校山岳部。第1弾では、新チームを引っ張る2年生3人が山岳部に入ったきっかけや、それぞれが感じている登山の魅力、競技に向き合う姿勢を紹介した。
第2弾では、登山競技の仕組みや日々の練習、鳥栖工業高校の強みである「読図」に迫る。
登山競技は、山頂への到着速度だけを争うものではない。歩行や体力に加え、読図、記録、テント設営、炊事、課題テストなど、山で安全に活動するための知識や技術が総合的に審査される。
中でも、鳥栖工業高校山岳部の武器となっているのが、地図と実際の地形を照らし合わせて現在地などを判断する読図の正確さだ。歴代の先輩や顧問から受け継いだ知識と、実際の山で積み重ねてきた経験が、その技術を支えている。
かちスポでは、主将の前田賢人選手、酒井遥希選手、小川隼大選手にインタビュー。登山競技ならではの特徴をはじめ、大会を見据えた練習、読図力を磨いてきた背景、そして新人戦連覇への思いを聞いた。
左から二年小川隼大・酒井遥希・前田賢人(主将)、一年川中泰臣選手
登山競技は速さだけを競うものではない
登山競技と聞くと、誰が最も早く山頂へ到着できるかを競う競技だと想像する人もいるかもしれない。
しかし、実際には山での生活全体が審査の対象になる。
前田選手は、競技の特徴についてこう説明する。
「大会中の生活そのものが競技になっています。登山での体力や歩行だけでなく、テント設営や炊事なども審査されます」
審査項目には、体力や歩行のほか、読図、記録、テント設営、炊事、課題テスト、計画書などがある。コースごとに規定の時間は設けられているが、早く歩けば高得点になるとは限らない。
「最初は誰でも、山頂にどれだけ早く着くかという競技だと思うかもしれませんが、全然違います。読図技術や記
録という審査項目もあり、登山競技にしかない技術も審査対象になります」
小川選手が話すように、安全に山を歩くための知識や技術、生活に必要な準備まで含め、合計100点満点で順位を競う。
大会は県大会で2泊3日、全国大会になると、開会式や閉会式などを含めて約1週間に及ぶこともある。選手たちは寝食を共にしながら、仲間と協力してすべての審査へ挑む。
互いの得意分野を生かし、足りない部分を補い合うチームワークも、得点を左右する重要な要素となる。
大会を見据えた日々の練習
山へ行かない平日の練習では、体力づくりやペーパーテスト、装備の確認などに取り組んでいる。
体力練習では、荷物を想定した重りを背負い、校内の階段を上り下りする。暖かい時期には、学校から比較的近い九千部山や朝日山などに登り、実際の山道で歩く力を鍛える。
山やコースは、単純な険しさだけで選んでいるわけではない。
出場する大会のコースや必要な体力を考え、勝つためにはどの山に何回登る必要があるかを逆算する。大会本番から練習内容を組み立て、登る回数や負荷を調整している。
酒井選手は、山へ入る前の準備も大切にしている。
「山で困らないように、必要なものを全部書き出すなどして、完璧に近い状態で行けるように意識しています」
登山では、山に入ってから忘れ物や準備不足に気付いても、すぐに取りに戻ることはできない。学校での練習中に必要な装備を洗い出し、山で不備が出ない状態を目指す。
周囲と競うことだけでなく、自分自身を鍛えることも酒井選手が意識している点だ。
「周りと競い合うことも大事ですが、一番は自分自身を鍛えることです。自分の心と体をともに鍛えていくことを意識しています」
体力、知識、準備、そして自ら判断する力。普段の練習で一つずつ積み重ね、新人戦で力を発揮できる状態をつくっている。
チーム最大の武器は「読図」
チームが新人戦で武器にするのが、読図の正確さだ。
読図では、地図に示された情報と実際の地形を照らし合わせ、現在地や進行方向を判断する。山で安全に行動するために欠かせない技術であり、大会では得点差も生まれやすい。
前田選手は、実際に山へ登る回数の多さが、チームの読図力につながっていると考える。
「土日などに山へ登る練習を結構しています。そこで地形を確認したり、大会で出そうな場所を予想したりしているので、読図が強いのだと思います」
酒井選手は、顧問との意見交換が重要だと話す。
「先生が見ている観点と自分が見ている観点を照らし合わせて、『ここはこうだよ』『ここはこうじゃないの』というコミュニケーションをずっと取っています。そこが一番鍛えられるところだと思います」
自分が地図のどこに注目したのか、顧問は何を根拠に判断したのかを確かめ、見方の違いを修正する。実際の地形を前に繰り返し考えることで、判断の精度を高めてきた。
3人の中でも、読図に強い自信を持っているのが小川選手だ。
練習では、顧問が山中に番号札を設置し、地図と地形を頼りに位置を判断する。選手同士で正答率を競う中、小川選手は「大体、自分が勝っています」と胸を張る。
その一方で、自分だけが正解することを目標にはしていない。
「自分自身を高めながら、周りがなぜミスをしたのかも考え、チーム全体のレベルが上がるように練習しています」
小川選手は、現在の読図力について、歴代の先輩や顧問から受け継いだものが大きいと話す。
「自分たちが練習しなければ技術は身に付きませんが、教えてくださる人がいなければ、そもそも身に付くものではありません。それに加えて、経験がないと本当に身に付かないと思っています」
受け継いだ知識を、実際の山で確かな技術へ変える。そして、自分が得たものを仲間へ共有する。その積み重ねが、チーム全体の読図力を支えている。
勝利を支える3人の役割
新人戦連覇という共通の目標へ向け、3人はそれぞれの役割で得点に貢献しようとしている。
前田選手の個人目標は、担当する気象のペーパーテストで満点を取ることだ。
「僕の個人での最終目標は、座学のペーパーテストで担当している気象で満点を取ることです」
気象では、雲や天気などに関する知識が求められる。大会で登る山の地名や歴史などが出題されることもあり、山を歩く力だけでなく、机に向かって知識を増やすことも必要となる。
酒井選手は、新人戦のさらに先を見据えている。
「インターハイに行って、優勝を目指したいです」
登山競技では、誰かを頼るだけでは安全に行動できない。新人戦や県大会で結果を残すだけでなく、競技を通じて自分の考えで行動できる人になることを目標に掲げている。
小川選手は、担当する天気図と読図で満点を狙う。
「上位大会やインターハイで天気図を満点で取りたいです。読図技術も僕が担当しているので、それも満点を取り、チームに最大限貢献したいと思っています」
大会では、テント設営や体力、歩行、炊事などで大きな点差がつかない場合もある。そのため、課題テストや読図、記録といった項目で失点を防ぐことが勝利の鍵になる。
「僕たちは、そういうところで絶対に点数を落とさないように練習しています。もし点数を見ることができるなら、そこに注目してほしいです」
気象で満点を狙う前田選手。自ら考えて行動する力を磨き、インターハイ優勝を目指す酒井選手。読図と天気図の技術で得点を支える小川選手。それぞれが自分の役割を果たすことで、チームとしての100点に近づいていく。
最後に、主将の前田選手は新人戦への決意を語った。
「今回も、連覇できるように頑張りたいと思います」
歴代の先輩や顧問から受け継いだ読図力と、実際の山で積み重ねてきた経験を力に変える。2年生3人を中心とした新チームが、それぞれの得意分野を得点につなげ、新人戦連覇へ挑む。
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