【2025 佐賀 総体へ向けて】「限られた時間を力に変えて」致遠館高校女子テニス部 監督 青木貴洋先生
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いよいよ、高校生たちの熱き夏が始まる――。
各競技の頂点を懸けた高校総体が、今年も幕を開ける。これまで積み重ねてきた努力、仲間との絆、そして競技に懸ける思いを胸に、多くの選手たちが最後の舞台に挑もうとしている。
女子テニスで注目を集めるのが、致遠館高校女子テニス部。昨秋の新人戦では強豪・鳥栖商業を破って準優勝を果たし、大きな手応えをつかんだ。
「総体での優勝」を目標に掲げ、チーム一丸となってこの夏に挑む彼女たちを導く、監督の青木貴洋先生にその強さの理由と、総体へ向けての想いを聞いた。
ーーー限られた中で見つけた、チームのかたち
「うちの生徒たちはテニスで進学してきた生徒はいなくて、勉強も頑張りながらテニスも頑張っているという背景がある。他校と比べると練習時間が限られてきますが、だからこそ、その時間の中で“何をするか”がすごく大事になってくる」と監督は語る。
練習では、全体の流れこそ監督が整えるものの、時間配分や内容の一部は選手たちに任せているという。そうすることで、それぞれが自分の目標に合った練習へと自然と向かっていけるようだ。
「全部を練習できないからこそ、自分たちに必要なことを選んで取り組んでいる。そういう姿勢が、結果的にチームとしての強みにつながっているのかもしれませんね」とチームを俯瞰的に見る監督の一言。
ーーー主将・佐藤選手の、静かな信頼
そんなチームの中心にいるのが、女子主将・佐藤選手。日々コツコツと自主練習に取り組む姿が印象的だと青木先生は語る。
「時間を見つけては自ら練習している姿を見かけます。その姿があるからでしょうか、チームメイトも彼女の言葉に自然と耳を傾けているように見えます」
彼女のその姿勢が、言葉ひとつひとつの説得力を増し、チームの団結につながっている。彼女の存在が、今のチームをそっと支えている。
ーーー優勝を“信じる力”が、チームを強くする
迎える総体は、選手たちにとって集大成の舞台。しかし、青木先生は彼女たちの“冷静すぎる”一面に少しだけ刺激を与えたいと考えている。
「選手たちは、自分たちの実力や相手の力をとても現実的に見ている。でも総体は極限状態の中での勝負。何が起きるかは誰にもわかりません。だからこそ、もっと“優勝したい”という気持ちを強く持ってもいいと思うんです。10回に1回しか勝てないと思っていても、『その1回が総体で起きる』と。もちろん難しい試合もあると思いますが、どこかで、“もしかしたら”という気持ちも持っていてほしいなと思います」
それは「勝ちにいこう」と言い切るよりも、むしろ「信じてみてもいいのでは」という、監督のささやかな後押しのようにも感じられる。
ーーー1球1球に、これまでの時間を乗せて
最後に、総体に向けて監督は「これまで積み重ねてきた技術と努力。それがコート上でたとえ1球、2球でも発揮されるなら。今までやってきたことが出せるように」と。
致遠館高校女子テニス部。このチームは、勝敗だけでは測れないものを大切にしている。限られた時間をどう使うか、仲間とどう向き合うか。その積み重ねが、きっと総体の舞台で表れるはずだ。
株式会社WIDE - 永石恒陽