勝っているかのような雰囲気で――鳥栖高校・石松悠太主将が導く、勝利の空気

夏が来る。高校球児たちにとって、すべてを懸けた季節が始まる。
今春の悔しさを胸に秘めて、あるいは最後の夏に向けて地道に力を蓄えてきた球児たち。県内の熱戦がいよいよ幕を開けようとしている。
今回は、今大会で注目される4校に焦点を当て、それぞれのチームが抱く思いや準備の過程を取材した。
本記事で注目するのは鳥栖高校。キャプテンである石松悠太選手へのインタビューを掲載します。
鳥栖高校 石松悠太選手
ーー目指すは“甲子園で勝つ”チーム
鳥栖高校の主将・石松悠太選手は目標を明確に口にする。「佐賀県での優勝は絶対。そして、甲子園に行っても勝てるように――」。その高い目標は監督・山田先生の言葉としてもチームに共有されており、選手たちは日々、県を超えた戦いを意識している。
ーー秋の悔しさが、冬と春を変えた
昨秋、鳥栖はベスト8で北陵に敗退。「点が取れる場面で取れなかったことが悔しかった」と石松主将は振り返る。冬場はその悔しさを胸に練習を重ね、迎えた春。佐賀東戦ではヒット数では上回りながらも敗れ、チームは勝負の厳しさと“雰囲気の差”に気づいた。「勝ってるのに負けているような雰囲気があった」とし、以降はミーティングを重ねて“メンタル”に向き合ってきた。
ーーNHK杯優勝、カギは“プラスの声”
その努力は、NHK杯で花開く。決勝で2点先制される苦しい展開でも、チームは焦らなかった。「負けているけど勝っているかのような雰囲気」で、前向きな声を出し続けた結果、逆転での優勝。キャプテンとしての石松の意識が、チームの雰囲気を変えた。
ーー雰囲気は“声”でつくる
「すぐにメンタルが変わるわけではないけど、声を出せば雰囲気はつくれる」と石松主将。強豪との練習試合では、先制されても“あえて”ポジティブな声を出すことを意識してきた。自分たちで“勝つ空気”を作ること、それが石松の考えるキャプテンの仕事だ。
ーー打撃だけでなく、守備にこだわる
現在の鳥栖は打てる選手が多く、攻撃力には自信がある。しかし、石松は「守備ができないと勝てない」と語る。土台となる守備で自滅しないことが、勝利への絶対条件。「基礎にこだわる」ことをチームの核に据えている。
ーー“全員野球”で過去を超える夏に
ここ2年、鳥栖は夏の初戦敗退が続いている。プレッシャーに押され、自分たちの野球ができなかった。石松は「去年は去年」と過去を割り切りつつ、「グラウンドに立っていなくても、声かけや笑顔で全員野球を」と話す。苦しい場面でも全員で戦い抜く覚悟が、今年の鳥栖にはある。
メンタル面での成長と、守備へのこだわり。鳥栖高校は今、ひとつ上のステージを本気で見据えている。石松主将のもと、勝利を“雰囲気ごと”つかみにいく夏が始まろうとしている。
株式会社WIDE - 永石恒陽